鉄は錆びているか… 相変わらずコロナ禍の中での窮屈な毎日を強いられている。首都圏では、ようやく緊急事態宣言が解除されたものの、解除直後からリバウンドが懸念されており、飲食店を筆頭に「いつまで我慢すればよいのか」という不安と「いい加減にしてくれ」との不満が渦巻いている。（特措法に基づき東京都から深夜営業の停止命令を受けた企業が、損害賠償を求めて東京地裁に都を提訴するという事態も発生している）
さて、今日から4月、新年度の始まりである。令和3年度の一般会計総額は約106兆6,000億円と過去最大となったが、国の長期債務が1千兆円の大台を超える中での超大型予算である。非常時に国が借金をしてでも、企業と雇用、暮らしを支えることはもちろん必要であるが、予算全体のうち借金で賄う割合を示す公債依存度は、実に64％に跳ね上がるというから、あまり気持ちの良いものではない。しかも聞こえてくるのは、これでは不十分だという声ばかり、気持ちはわかるが、自ずとモノには限度があるということではないだろうか。
また、政府として三度緊急事態宣言を発令すべきかの議論があるようであるが、民主主義において緊急事態宣言とは、平時であれば違法とされる行為を、緊急性を理由に合法とすることだそうである。そして、民主主義は、市民の健康の保護という名のもとに、簡単に独裁に代わるというから恐ろしい。
恐ろしいといえば、働く者にとって働く場を失うほど恐ろしいものはない。鉄鋼産業・企業においても、コロナ禍の未曽有の経済危機の中で、生き残りをかけて必死である。日本製鉄においても、昨年に引き続き、新たな生産設備構造対策への取り組みが打ち出され、職場に激震が走っている。現在、会社との交渉を継続しつつ、職場における疑問点・問題点の把握に努めているところであるが、休止対象となっている設備に従事する組合員の気持ちは、察するに余りあるものがある。労働組合として、組合員の雇用と処遇は必ず守り切らなければならない。そして、今回の中長期計画が「総合力世界��1の鉄鋼メーカー」へつながっていくのかを、納得がゆくまで労使で徹底的に議論する必要がある。
最後に、これを機に新日鐵（当時）の大合理化を中心に当時の鉄鋼産業の状況を取材した「鉄は錆びているか 新日鐵の苦悩（小邦宏治作・1979年1月30日初版発行）」を改めて読んでみた。その本には、当時の人たちの苦渋の決断、血の滲むような協力・努力が丹念に描かれている。
そして、この本の最後は「鉄は錆びているか？」との問いかけに対し、「いや、まだまだ錆びてくちはてることはないのだ。」という言葉で締めくくられている。
あれから42年、今度は私たちが、鉄を錆びさせることなく、次の時代へつないでいかなければならないのである。
ご安全に！
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