最後は、優しい気持ちで もう師走。1年が早く感じることを「ジャネーの法則」と言うらしいですが、ほんと歳をとるたびにそう思えます。皆さんにとっての2024年はどのような1年でしたか。
今月は、黒田三郎さんの「夕方の三十分」という詩をご紹介し、本年を締めくくるメッセージとします。
コンロから御飯をおろす
卵を割ってかきまぜる
合間にウィスキーをひと口飲む
折紙で赤い鶴を折る
ネギを切る
一畳に足りない台所につっ立ったままで
夕方の三十分
僕は腕のいいコックで
酒飲みで
オトーチャマ
小さなユリの御機嫌とりまで
いっぺんにやらなきゃならん
半日他人の家で暮らしたので
小さなユリはいっぺんにいろんなことを言う
「ホンヨンデェ オトーチャマ」
「コノヒモホドイテェ オトーチャマ」
「ココハサミデキッテェ オトーチャマ」
卵焼をかえそうと
一心不乱のところに
あわててユリが駈けこんでくる
「オシッコデルノー オトーチャマ」
だんだん僕は不機嫌になってくる
化学調味料をひとさじ
フライパンをひとゆすり
ウィスキーをがぶりとひと口
だんだん小さなユリも不機嫌になってくる
「ハヤクココキッテヨォ オトー」
「ハヤクー」
かんしゃくもちのおやじが怒鳴る
「自分でしなさい 自分でェ」
かんしゃくもちの娘がやりかえす
「ヨッパライ グズ ジジイ」
おやじが怒って娘のお尻をたたく
小さなユリが泣く
大きな大きな声で泣く
それから
やがて
しずかで美しい時間が
やってくる
おやじは素直にやさしくなる
小さなユリも素直にやさしくなる
食卓に向い合ってふたり坐る
元旦に発生した能登半島地震。不安から始まった2024年。世界でも対立・衝突・分断が続き、嫌悪を増幅させながら泥沼化していく悲しいニュースが絶えません。嬉しかった・楽しかったこと、それとは異なるような出来事など、皆さんも色々あった一年だったことと思います。そんな今年もあと1か月。年末のひと月はぜひ「優しい気持ち」で過ごしていただければと思います。
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